生活支援ロボットデザイン支援事業例 | CASE01
空圧式足首可動域改善補助装置の開発

パワーアシストレッグrelegs (株)エルエーピー ロゴマーク
  • 平成27年度〜商品化促進モデル事業
  • 開発企業/(株)エルエーピー(「さがみロボット産業特区」重点プロジェクト)
  • デザイン事業者/(株)ホロンクリエイト

  • 商品名/パワーアシストレッグrelegs
  • 販売者/(株)エルエーピー
  • 参考価格/250,000円(税別)
  • レンタル価格
  • 本体単体 7,980円/月(税別)
  • 本体+制御ボックス 23,000円/月(税別)

  • <協力・連携関係者>
  • ユーザー・アドバイス/七沢リハビリセンター(現:神奈川県総合リハビリテーションセンター)
  • 筺体設計製造/(株)オーイズミ
  • インナー製作/(株)トータス
  • カウリング成型/(株)渡辺プラスチック工業
  • ベローズキャップ/(有)テクノ今井
  • グラフィックシール/(株)ジャパン・アート
  • 梱包材/(有)紙工・小師
  • 取扱説明書/(株)アイワ
  • 商標、意匠、特許申請/ライオ綜合特許事務所

空圧式足首可動域改善補助装置の開発について

平成25年に設立された(株)エルエーピーは、麻痺した手指や足首のリハビリテーションロボットの研究開発、製造・販売を行っています。
これらは、脳血管疾患や怪我等によって足首が麻痺したり拘縮したりした方のQOL(生活の質)向上を図るためのロボットです。原理としては、空気圧を利用して空気袋(ベローズ)を伸縮させ、手指や足首の関節の曲げ伸ばしをゆったりと安全に行うというものです。
(株)エルエーピーでは、先行して商品化された手指対応の製品に続くものとして、新たに足首用の開発に取りかかっていましたが、試作を重ねても「機械」の印象が強く、どうしても重装備に見えてしまいます。デザイン開発によって、よりユーザーが使いやすいものにし、商品化したいという意向がありました。
相談を受け、デザイン支援事業を開始したKISTECは、デザイン事業者やリハビリの現場の方々等と協力して、商品戦略・企画から3Dプリンターによる試作開発支援、ユーザーヒアリング、製造監修まで一貫して支援することができました。さらに、ブランディング戦略の一環として、デザイン事業者である(株)ホロンクリエイトがロゴデザインも制作しました。
開発の流れは8〜10ページのとおりです。平成28年10月には商品化を達成することができ、現在、販売実績を伸ばしています。
空気圧で足首をゆっくりと動かす。

空気圧で足首をゆっくりと動かす。

メーカー、デザイナー等が集まり企画会議を重ねた。

メーカー、デザイナー等が集まり企画会議を重ねた。

量産に向けた打ち合わせ。

量産に向けた打ち合わせ。

モデルベースで機器の動きを検討。

モデルベースで機器の動きを検討。

理学療法士を交えてユーザーヒアリング。

理学療法士を交えてユーザーヒアリング。

「空圧式足首可動域改善補助装置の開発」支援の流れ

■支援前の開発

空気圧を利用して、アキレス腱部分にある空気袋(ベローズ)を伸縮させ、足首関節の曲げ伸ばし運動を安全にサポートする装置。空気圧を利用したパワーアシストロボットの研究をしている大学の先生の機能原理に基づいて、(株)エルエーピーでは、試作を繰返していた。しかし、なかなか商品化への展望が見えなかった。
空圧式足首可動域改善補助装置の支援前の開発

POINT

理学療法士から「足首は多軸で動くもの」とのアドバイスを受け、それに対応できるものとして蛇腹の空気袋(ベローズ)で空気を送り複雑に動かす方法を考案。いくつもの試作をつくったが、ものものしい機械装置となってしまい、頭を悩ませていた。
空圧式足首可動域改善補助装置の支援前の開発 (株)エルエーピーでは以前、「さがみロボット産業特区」重点プロジェクト等の支援によって、空気圧を利用した手指の可動域改善補助装置を商品化させており、新たな事業展開を考えていた。

STEP01■KISTECに相談

開発企業の課題

  • ・どうしても機能ばかりが前面に出てくるモデルになってしまう。
  • ・ユーザーニーズの把握不足。
  • ・開発テーマがぶれてしまう。
  • ・機械的な印象でユーザーが使いにくい。
  • ・デザイン開発のタイミングが遅れた。

KISTECの提案

  • ・デザイン活用の場を提供する。
  • ・KISTECに試作開発環境を整備し、試作段階から実現性、事業性を向上させる。
  • ー 具体的には、以下のような支援を提案した。ー
  • ・「さがみロボット産業特区」と連携する。
  • ・開発から事業化・商品化を見据えた総合的なデザイン支援を行う。
  • ・デザイン事業者とのマッチングを行う。
  • ・メーカー、ユーザー、デザイン事業者、関連企業等の調整を行い、プロジェクトをスムーズに進められるようサポートする。
  • ・3Dプリンターによる試作。
  • ・知財に関する助言、専門家との調整。

STEP02■プロポーザルによるデザイン公募

デザイン事業者からの提案

  • (株)ホロンクリエイトのプロポーザル案は、ユーザーが求めている原点に立っての提案があった。
  • ・着脱のしやすさ。
  • ・サイズ展開のあり方。
  • ・リハビリで継続的に使えること。
  • ・スマホを使った操作盤の提案。

プロポーザル案

空圧式足首可動域改善補助装置のプロポーザル案

POINT

審査会では、ビジネスデザインとして開発テーマをどのように導くか、が審査され、この提案は、支援計画とともにデザインコンセプトが高く評価された。
                                     

STEP03■デザイン事業者をマッチング

STEP04■商品企画の再構築

協力・連携メーカーを交えて協議

製品の再構築を行うため、開発企業、デザイン事業者だけでなく、それぞれの専門家にも集まってもらい、協議が始まった。
まず、モデルベースにおいて、足の動き、リハビリ可動領域、動作、競合製品との差別化等を検討。量産する場合のコストやロットまで考慮している。

POINT

協議の結果、必ずしも複雑な足首の動きに合わせなくても、単純化した構造であれば使いやすく動きも悪くない、ということになった。
  空圧式足首可動域改善補助装置の検討

STEP05■検討を重ねる

さまざまな立場から検証

方向性を絞り込んで再確認。コンセプトを確認していった。その後、試作による外観、組付け、動作確認等を何度も行い。改良した。 空圧式足首可動域改善補助装置の検証

試作の改良

改良を重ね、形ができてきたら、理学療法士にチェックしてもらい、意見を聞いた。評価は良好だった。 空圧式足首可動域改善補助装置の試作改良
 

STEP04-5まではユーザーへのヒアリングを行い、改良点を3Dプリンターで造形して確認することが何度も繰返された。

STEP06■量産化を検討

量産化コストを考慮した外観検討

ダイバーが着るウエットスーツに使うネオプレーン材をゆりかご部分につかうことで、感触もやわらかく、装着もスムーズにできるようになった。 空圧式足首可動域改善補助装置の量産化コストを考慮した外観検討
産化コストも考えて外観を検討。この時期に検討したのは、いかにコストダウンして量産化するか、知財対策をどう行うか、安全性の確認、資金調達等だった。 空圧式足首可動域改善補助装置の外観を検討
 

STEP07■商品化を検討

量産化ロットを考慮した最終モデル

ダイバーが着るウエットスーツに使うネオプレーン材をゆりかご部分につかうことで、感触もやわらかく、装着もスムーズにできるようになった。 空圧式足首可動域改善補助装置の量産化ロットを考慮した最終モデル

POINT

ベローズ(空気袋)を足の後にすることで、装着がスムーズにできる。
*ベローズ部分等は特許取得済み。

ユーザー確認。

実際にユーザーに装着してもらい、問題点を聞いた。 空圧式足首可動域改善補助装置のユーザー確認

POINT

商品化に先立って、JQAによるリスク分析演習を行い、リスク対策を行った。
 

STEP08■商品発表 2016年10月

商品化達成

リハビリ、リカバリーの「re」をとって、パワーアシストレッグ『relegs』という商品名が決定。先に開発した「パワーアシストハンド」に加え、その後商品化されたパワーアシストリスト『rewrist』(11ページ参照)が揃い、3つのブランドが育った。
パワーアシストレッグ『relegs』 パワーアシストレッグ『relegs』ロゴマーク