“美工連携”による構造色顔料の開発

構造色顔料の特徴

無色の液体からカラフルなシャボン玉が作られるように、形を制御すれば色を発現することができます。宝石のオパールの虹色も、数百ナノメートルの周期構造が光に作用して発現する構造色です。国宝に指定されている茶碗「曜変天目」の美しい色彩が、近年、構造色と言われていることから、陶芸における構造色のニーズは高いと期待されます。そこで、オパールの構造色を陶磁器に応用することを目的とし、女子美術大学と”美工連携”となる共同研究を開始しました。

オパールの微構造と発色は、サブミクロンサイズの粒子を液相合成し最密充填することにより人工的に模倣できます(図1)。人工オパールは、液体原料を混ぜるだけで簡単に合成でき、夏休みイベントで小学生の皆様に作っていただいたこともあります。

人工オパールの(a)微構造と(b)発色原理
図1 人工オパールの(a)微構造と(b)発色原理

研究成果

女子美術大学 工芸専攻の協力の下、制作した作品を図2に示します。

合成した粒子分散液を絵具のように塗布した後、焼成して制作しました。原料の配合比率で粒子の大きさをコントロールし、紫、青、緑、黄、赤等の様々な色を発現することができました。

人工オパールの魅力を活かした作品
図2 人工オパールの魅力を活かした作品

また、図3に示すように、見る角度(光の角度)によって色が変わる特徴を有することが分かりました。

人工オパールは、角度に依存して周期間距離の異なる三次元構造を形成するため、角度依存性のある発色になったと考えられます。

異なる角度から撮影した写真
図3 異なる角度から撮影した写真

角度依存性のある発色を利用して、図4に示すような同心円状の虹色デザインを施すことも可能です。

虹色デザインを施した作品
図4 虹色デザインを施した作品

陶芸以外への応用も可能です。サンプル提供(有償)も行っておりますので、お気軽にお問合せ下さい。

★KISTEC単独で特許を2件出願しました。
★研究成果が国際誌 Journal of Asian Ceramic Societies vol.8 (2020) 578-585に掲載されました。
★(国研)科学技術振興機構 新技術説明会にてPickUP! 新技術に選ばれました。
★技術情報誌「コンバーテック」2020年7月号に取材記事が掲載されました。


ご利用を希望される方へ

このページのご紹介内容は、技術開発受託(受託研究)でご利用いただけます。

実施可否・料金等は相談の上、決定させていただきます。サンプル提供(契約締結が必要・有償)

関連リンク

  1. [PDF]KISTEC NEWS 2019 Vol.3(p.4)
  2. [PDF]人工オパールの構造色を利用した虹色の陶器を開発 -”形”で色をコントロールする構造色の新たな応用-(参考資料)
  3. [PDF]KISTEC ANNUAL REPORT 2020(p.27 人工オパールの陶磁器への応用)
  4. 論文情報:Application of silica opals to ceramic pottery

ご活用いただける業種、分野等

今回の“美工連携”による構造色顔料の開発の事例は、以下のようなお悩み・課題の解決にご活用ください。

・新しいデザインによる製品の高付加価値化
・レアメタルフリー顔料として従来顔料の代替

【PRポイント】
・新しいデザインが可能(高輝度発色、角度依存性のある発色、虹色デザイン)
・人体や環境にやさしい素材(砂や窓ガラスの主成分と同じ酸化ケイ素)
・原料、設備投資とも低コスト(室温で撹拌するのみ)

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  • 担当:機械・材料技術部 ナノ材料グループ