NAS振動試験によるねじの緩み評価

NAS振動試験

ねじの緩みや脱落は重大な事故につながるため、緩み防止機能を高めた様々なねじ製品が開発されています。その実証試験として、ねじの緩み評価試験が行われています。

代表的なものに、米国航空規格 NAS3350に準拠した衝撃加振式のねじの緩み評価試験があります。KISTECでは振動試験機を活用してNAS振動試験が実施できるよう取り組んでいます。

試験体は治具の長穴内で自由に上下動できるようになっています(図1)。加振台を表1の条件で上下方向に振動させると、試験体は穴の上下両端に衝突します。これを繰り返すことでねじの緩みを評価するのが NAS振動試験です。

図1. NAS振動試験の構成(上)と外観(下)

ねじの緩み評価

一般にNAS振動試験で得られる結果は、試験体が脱落するまでの時間で、緩みの状況を詳細に解析することは困難でした。

KISTECでは、ボルト軸力の時間変化と発生音の特徴の変化を計測、解析することで、より詳細な緩み評価が行えないか検討しました。

ボルトの軸力変化については、専用の試験体を作製して、ボルトの軸方向ひずみを測定することにしました(図2)。また、同時に試験中に発生する音を測定しました(図3)。ひずみと音のスペクトログラムの特徴の変化から、緩みの状況について考察することにしました。

図2. 作製したボルト軸力測定用試験体(左上)と治具への設置(左下)

実施例

M8を対象に締付トルク16Nmで締結してNAS振動試験を行い、加振開始から試験体が脱落するまでのひずみと音を測定しました(図4(a)(b))。

音響信号を短時間フーリエ変換してスペクトログラムを求めたものが図4(c)です。

ひずみと音のスペクトログラムの結果から、 ボルトの軸力がなくなるタイミングで音の特徴が大きく変化していることが分かりました。

NAS振動試験中に発生する音を分析することにより、より詳細な緩み評価が可能となりました。

                    

         

■本内容は、日本ねじ研究協会誌 第54巻, 第4号(2023)121-125に掲載されたものです

■2024年2月現在、対応可能なボルト呼び径はM6,8,10です

図4. 試験体のひずみ(a) と音圧(b) の時間変化、スペクトログラム(c)
(動画)加振中の試験体

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