うま味に関わる成分の分析による熟成ハムの「味」の見える化

うま味に関わる成分の分析とは?

食品のおいしい「味」の指標となる うま味、塩味、食感を見える化する方法として
 ・ 遊離アミノ酸、ペプチド、核酸類の定量分析
 ・ 塩分、水分量の測定
 ・ 香気成分の分析
 ・ かたさ (やわらかさ)
 ・ 色調
 ・ 脂質の融点変化
 ・ 遊離脂肪酸、過酸化脂質の定量分析
などが挙げられます。
これらのうち、今回は
 ・ 遊離アミノ酸、核酸類の定量分析
 ・ 塩分、水分量の測定
 ・ 脂質の融点変化、遊離脂肪酸量の測定
を行いました。

熟成期間中のうま味成分の経時的な量的変化の分析

有限会社ハム工房ジローが製造する長期熟成ハムについて、熟成期間中のうま味成分の経時的な量的変化を分析しました。

うま味を持つグルタミン酸は浸漬中に増加し、浸漬28日目には もとの豚肉(浸漬0日目)の3倍以上になりました。同じくうま味を持つアスパラギン酸は浸漬21日目以降に生成し始めました(図1)。

図1 ハム(赤身部分)のうま味アミノ酸含量の経時変化

ハムの遊離アミノ酸含量は浸漬10日目頃から増加し始め、浸漬28日目には もとの豚肉(浸漬0日目)の2倍以上になりました(図2)。

うま味を持つグルタミン酸、アスパラギン酸が増加しただけでなく、他のアミノ酸も増加しており、味に深みが出ると考えられます。

図2 ハム(赤身部分)の遊離アミノ酸 総量の経時変化

脂質の融点は、直接 味に影響しませんが、舌触りや口溶け、なめらかさ、コクなどの食味に影響すると考えられています。浸漬14日目から脂質の融点が低下しました(図3)。コクとして味の濃厚感などが出ると考えられます。

図3 ハムの脂質の融点の経時変化

浸漬21日目からハムの水分量が減少しました(図4)。ハムの水分が抜けることでハムのうま味成分が凝縮され、しっかりとした味のハムになると考えられます。

ハムを製造する際、通常は調味液を肉に注入するため ハムの水分量は増加しますが、有限会社ハム工房ジローは浸漬のみで製造しているため ハムの水分量は減少していました。

図4 ハムの水分量の経時変化

これらの結果から、長期熟成がどのようにしてハムの美味しさを引き立てているのかの一端を明らかにできました。


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